大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和61年(ワ)13816号 判決 1988年6月06日

原告 株式会社横浜銀行

右代表者代表取締役 大倉真隆

右訴訟代理人弁護士 小川善吉

奥平力

被告 大阪貿協株式会社

右代表者代表取締役 柳瀬正治

主文

一  被告は、原告に対し、アメリカ合衆国通貨一四三、〇六九ドル三二セント、及び内同通貨一四、〇六九ドル三二セントにつき昭和六一年四月一九日から、内同通貨六九、〇〇〇ドルにつき同年五月三日から、内同通貨六〇、〇〇〇ドルにつき同年同月八日からそれぞれ支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

理由

一  原告が銀行業を営む株式会社であり、被告は衣類の輸入等を業とする株式会社であつて、フアーイースト・ランバー・トレイデイングに本件委任事務等を委任したことは当事者間に争いがない。

二  ≪証拠≫を合せると、被告は昭和六〇年一〇月一五日ころフアーイースト・ランバー・トレイデイングに対し本件委任事務等を委任する際、右事務等を処理するために必要な代理権を授与し、更にフアーイースト・ランバー・トレイデイングは同年同月二三日ころ被告の承諾を得て大日産業に本件委任事務等の処理を委任するとともにその処理のため復代理権を与えたことが認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

三  ≪証拠≫を合わせると左の事実が認められる。

1  大日産業は、昭和六〇年一〇月二三日原告に対し、被告からフアーイースト・ランバー・トレイデイングに対する委任状及び同会社から大日産業に対する委任状各三通を交付するとともに、被告の復代理人として被告のために輸入信用状の発行、輸入為替手形の引受及び決済等の取引を依頼する旨の念証を差し入れた上、三通の輸入信用状の開設を申し込み、原告はこれを承諾して本件輸入信用状三通を発行した。

2  原告は、輸入信用状の開設に関する取引において、通常輸入業者の希望により輸入為替手形の支払につき一定期間の支払猶予(いわゆる輸入ユーザンス)を承認しており、本件各輸入信用状の開設に当つても、大日産業が支払猶予を求めたので、これを承諾し、被告のため輸入為替手形を決済する方法で輸入代金を立替払いすることを約した。そこで大日産業は、原告の被告に対する立替金返還請求権を保証する趣旨で原告に約束手形三通(額面合計一四万三〇六九・三二ドル)を振り出した。

3  原告は、本件輸入信用状番号YL九一四―一〇五六八番にかかる輸入為替手形については昭和六〇年一二月一七日に一万四〇六九・三二ドルを支払い、本件輸入信用状番号YL九一四―一〇五六六番にかかる輸入為替手形については同年同月二七日に六万九〇〇〇ドルを支払い、本件輸入信用状番号YL九一四―一〇五六七番にかかる輸入為替手形については昭和六一年一月六日に六万ドルを支払つて右各手形を決済し、もつて右同額の輸入貨物代金を被告のため立替払いした。

以上のとおり認められる。なお≪証拠≫によれば、大日産業は原告に本件各輸入信用状の開設を申し込む際右各申込書そのものにおいては被告の復代理人であることを明記していないと認められるけれども、右認定のとおり大日産業は右申込に当たり被告の復代理人として行うものである旨の念証を原告に差し入れており、また≪証拠≫によると右各申込書における本件各輸入信用状の開設に基づく取引勘定の帰属者欄(「FOR ACCOUNT OF」)には被告の商号が記載されていることが認められるので、これら事実に基づくと、大日産業は本件各輸入信用状の開設申込に当たり、原告に対し被告の復代理人として行うことを表示したものと認められる。次に前記のとおり、通常輸入業者は輸入信用状の開設を受ける際いわゆる輸入ユーザンスを希望し、原告においてもこれを承認しているのであるから、本件においても被告は特段の事情がない限り本件委任事務等にいわゆる輸入ユーザンスを受けることを包含させたものと推認されるところ、被告がいわゆる輸入ユーザンスを受けず輸入為替手形を直ちに決済する計画であつたことなどのいわゆる輸入ユーザンスを除外する特別の事情があつたことを窺い得るような証拠はなく、その他前認定を覆えすに足りる証拠はない。

四  よつて、原告の本訴請求は理由があるから認容

(裁判官 大喜多啓光)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例